プロジェクトSTORY

「食品の安全管理」と「見せる工場」の両立。〜チーズファクトリープロジェクト

国際的な食品安全マネジメントシステムの最新基準に対応すると同時に、見学者を意識した「見せる工場」を追求するという難題に挑んだ、「株式会社なとりチーズファクトリー(埼玉第二工場)」プロジェクト。
引き合いから本格稼働に至るまでの2年半の道のりを、主要な役割を果たした社員たちの想いと共にご紹介しよう。

顧客にとって未来への指針となる
大型プロジェクトを特命受注

近年世の中では「家飲み」志向の消費者が増加。特にワインに合うチーズ類を中心に、家庭でのおつまみ需要が着実に拡大している。
そうした市場背景をとらえ、おつまみ業界のリーディングカンパニーである株式会社なとりは、主力商品の『チーズ鱈』をはじめとする酪農加工製品の生産能力増強を決断。さらなる事業の拡大を目指して、創業70周年となる2017年に、最新の自動化設備を備えた大型の新工場を本格稼働させることを決めた。

建設予定地は既存の埼玉工場(通称「ミートファクトリー」)の向かい側で、正式名称は埼玉第二工場、通称「チーズファクトリー」と呼ばれることになる。
土地取得を含めると莫大な予算を投じた大型設備投資であり、同社にとっては未来への指針ともなる“夢工場”として位置づけられた。
そしてこのビッグプロジェクトの設計・施工を、入札ではなく特命受注という形で、当社が託されることになったのである。

相反するミッションをいかに両立させ、
期待に応えるか

新工場の設計・施工に当たっては、実現すべき2つのミッションがあった。
1つは、食品安全マネジメントシステムの国際規格FSSC22000への対応である。
FSSC22000は、世界的な食品の小売・流通・メーカーで設立されたGFSI(国際食品安全イニシアチブ)が承認する、食品安全に関する最新のグローバルスタンダードである。世界が認める高度な食品安全管理を日々実践するには、認証の取得を視野に入れた先進の設計・施工技術が必要であった。

そしてもう1つは、来訪者を意識した「見せる工場」の追求である。
新工場ではバイヤー、ファン、工場見学者への対応を充実させたいとの強い要望があり、エントランスや見学者通路などを含め、見る楽しさに配慮した空間構成が求められた。
食品の安全管理のために異物混入や防虫対策を徹底するには、部外者を製造現場に極力近づけない構造にするのが一番効率が良い。しかし見学者の満足度向上を考えると、できるだけ現場の近くで製造工程を見てほしいという想いがある。
「食品の安全管理」と「見せる工場」 − 全く相反するミッションの両立は、難易度が高い分、造り手としては腕の見せ所でもあった。

エントランスホール
エントランスホール

見学者通路
見学者通路

構造・空間構成上の課題を着実に解決

まず食品の安全管理については、機能性と清潔性を重視した内外装材の採用や、差圧管理*によるクリーン度のエリア分けの明確化、周辺状況に合わせた外構・防虫計画など、FSSC22000の基準に対応した仕様を具現化した。特に防虫面では、空気でバリアを形成する最新のエアーシャッターや、紫外線が出ないため虫が集まりにくいLED照明を採用するなど、設備による対策も徹底した。

一方「見せる工場」の追求については、見学者通路をクリーンエリアに組み込み、生産設備のある広い加工空間などと一体感を持たせた。そして見学者目線を重視した品格あるエントランスの設計や、食育に親しんでもらう空間作り、なとりの歴史を紹介したコーナーの設置などを実現。見学者に楽しんでいただける空間設計を行った。

また外観・内観のデザインについては、クライアントの思い入れがある「北欧調」「シンプルモダン」を踏まえた色彩計画を立案。緑色と木目をベースにして、機能性と清潔感のある材料を選んだ。

こうして、プロジェクトの相談を受けてから約1年後に実施設計が完了。2016年1月から建設工事がスタートした。

*差圧管理:クリーンにしたい部屋と室外(廊下など)の気圧に差をつけて、室外から空気が入り込まないようにすること。

ビジュアルルーム
ビジュアルルーム

体験試食ルーム
体験試食ルーム

大型最先端食品工場の設計施工ノウハウを確立

施工に当たっては当社の経営層、幹部、実務部隊、協力会社が一丸となって万全の体制で臨んだ。迅速な判断力とスケジュール管理の徹底が求められる中、作業員を含む最大約300人の現場従事者が、一つのチームとして機能するよう努めた。

施工において一つのポイントになったのが、柱など支点の間隔が広い「大スパンの鉄骨工事」への対応であり、重機の使用や梁かけの計画などを綿密に立てて、安全を確保しながら高い精度で施工を進めた。また、見学者通路から生産スペースを見下ろせる設計を取り入れたことにより、建物1階分の高さが通常の食品工場より高くなったため、高所作業の安全面にも十分な注意を払った。

こうして2017年3月に工事は無事に完了。7月からチーズファクトリーは本格稼働し、「見せる工場」として多くの見学者で賑わっている。そして当社にとっても、大型最先端食品工場の設計施工ノウハウを確立する上で、極めて価値のあるプロジェクトとなった。

プロジェクトメンバーの声

田森 伸之

1986年入社/東京本店工事担当 (所長)

プロジェクトでの主な役割

現場責任者としてお客様の要求事項・仕様を、専門的な技術と社内外調整マネジメントによって具現化すること。

何十億の買物をされるお客様の要求事項を、与えられた条件の中でいかに実現させるか。
経験値を超える想定外のこともあり苦労も多かったですが、個人的にも過去の担当物件の中で最大のプロジェクトであり、お客様への対応や社内外の調整、コミュニケーション形成において自身の成長につながる案件でした。

今後もメンテナンス対応などで関わりは続いていきますが、コンビニやスーパーでなとりブランドの商品を見るたびに、いろいろと思うところがあります。
自分も含めてプロジェクト参加メンバーにとっては貴重な体験であり、また当社にとっても大きな財産になる仕事でした。

上林 一貴

1996年入社/東京本店営業担当

プロジェクトでの主な役割

プロジェクトリーダーとして、お客様の要望を的確に会社へ伝達し、適材適所を見極め成果物を提供すること。

会社が私にプロジェクトリーダーという大役を与えてくれたこと、そして約2年半にわたって共に仕事をし、支えてくれた上司、先輩、同僚、後輩に感謝しています。

期間中はなとり様の社員になったつもりで取り組んでいましたが、今回の貴重な経験を経て自身の成長を実感すると共に、任された仕事の責任の重さを再認識しました。

お客様の「夢工場」は全て完成しているわけではなく、お手伝いは今後も続きます。今後も私の経験をフル活用し、仲間達と一緒に新しい領域を開拓していきたいと思っています。

池畑 勇貴

2008年入社/東京本店設計担当

プロジェクトでの主な役割

意匠設計と設計監理の実務担当者として、図面の作成、役所との協議、申請手続、各種完了検査などを遂行すること。

若手の設計者として、これほどスケールの大きなプロジェクトを経験できるチャンスは、そう多くはないと思います。

特に技術面では、最先端の食品工場実現に向け具体的な建築手法を立案するのに苦労しました。そして私が関わった設計内容に基づいて、多くの人々が関わり合いながらプロジェクトが進むことに、大きな責任を感じていました。

私を含め今回関わった各担当者の経験値が、そのまま会社の未来につながると確信しています。このプロジェクトに携われたことに感謝しています。